しんとした人気のない城で、することもなくぼんやりと夜空を眺める。 ―――いや、いつだって私に何かすべきことなんてあっただろうか。 あったような気もするし、でも何もしてこなかったような気もする。いずれにしてももう遅い話だが。 漆を塗ったくったような空に金剛石のように輝く光の粒、空気の綺麗なこの時代は星がたくさん見えて美しい。 「、今日はもう遅い。早く寝ろ。」 緩慢な動作で声の方向へ振り返ると、そこには音もなく三成さまが立っていた。 細くしなる枝のような身体に星色の髪に白皙の美貌、月をそのまま切り取ってきたような男はどこまでも美しい。 月明かりに浮かぶ姿は儚くどことなく幻想的ですらあり、まるで月が地上に落ちてきたよう。 「んー・・・・・。」 別に眠くはなかったが三成さまが言うのならそうなのだろう。 のそのそと埃っぽい押入れから布団を取り出し、手慣れた動作で敷いてからその中に潜り込む。 少し埃っぽい掛け布団にくるまれていつもの場所に視線をやると三成さまが刀を抱えたまま座っている。 きっと見張りのつもりなのだろう。 この場所にそんなものが必要なのか、そもそもそんなことに意味があるのか―――なんて無粋な事は言わずに私は目を閉じる。 瞼の裏側には未だ月の姿が張り付いている。 次に目を開けた時は朝だった。 鳥の鳴き声なんて暢気なものは聞こえない。圧倒的な静寂の世界。 生き物の気配を感じさせないその中でむくりと身体を起こすと、一晩中そこに居てくれたらしい三成さまと目が合う。 厚い雲の合間から漏れる、僅かな陽光に透ける銀糸が眩しくて目を細めた。 「―――起きたか。食事は?」 「ああ、まだそんなにお腹空いてないのでもう少ししたら取りに行こうかと。」 「そうか。」 普通は逆だろと苦笑してしまうような夫婦めいた会話。 僅かに緩められた葡萄の実のような瞳は柔らかく、そんな穏やかな仕草は以前からは想像もつかなくてこちらまで微笑みそうになる。 が、同時にいつもその目にふつふつと腹の底から沸騰するような感情が呼び起こされる。 自らでその堰を断ち切ってこの泥流のような想いをぶちまけて晒してやったら、この美しい男はどんな反応をするだろうか。 そうすればどんなに楽だろうかといつも想像し、そして想像で終える。苦しい。 「・・・・・・・・・・。」 そう言う三成さまは食べたのか、などと咎めるような無意味な真似はもうしない。 彼は、もう死んでいるからだ。 豊臣のかつての栄華の搾りかす。 それが石田三成という豊臣の子供の成れの果て。 西軍の大将だった男は今や亡霊という身分に貶められていた。 生きている頃から病的に白い肌、骨と皮ばかりの細い身体、眉間に皺を寄せた愛想のない顔、触れれば手折ってしまいそうな儚げな印象。 それは幽霊になった今もさほどの変化はなく、実は今でも生きているのではと錯覚したくなる。 けれど死んでいるのだと、目を凝らせば向こう側を見通せるその身体が物語る。 (まるで人間の透明標本みたいだ。) その死因は家康さまに関ヶ原の戦いで討たれたこと。 同じ戦いの地に赴いた吉継もまた、忠勝様と相討ちになって、――――、 私はその場所にいなかったからその瞬間を目撃することはなかったが。 けれど生きた人間のいなくなったこの城で再会した時に憮然と告げられた事実は、きっと真実なのだろうと思っている。 この人は意味のあるなしに関わらず嘘をつくような人ではないのはよくわかっていた。 それから数か月、かつては栄華を誇り現在進行形で廃墟になりつつあるこの城で、私達は奇妙な同居生活を送っている。 「布団はあれで寒くはないのか。そろそろ火鉢が必要な時期だろう。」 「そうですね。そろそろ出しておきたいですね。」 「ならばさっさと取りに行くぞ―――こっちだ。」 三成さまが立ち上がり部屋を出ていくのを私もその背を追う。 本当は寒くなんてないけれど、三成さまは半兵衛様の身体を冷やさないよういつも気を遣っていたから敏感なのだろう。 死んでからというものこの男は私に対して何かと気を遣ってくれるようになった。 生きていた頃は私の事なんてアウトオブ眼中と言わんばかりに傍若無人な態度をとっていたものだから、違和感と同時に少しくすぐったい。 食事の世話も睡眠の世話も以前は私が噛みついて世話をしていたのに今では逆なのだから笑えるものだ。 「今日も天気悪いですね。晴れませんかね。」 しんとした大阪城には私達の声しかなく、どんよりとした雲と鬱蒼とした空気に覆われたここは呪いの城と呼ぶにふさわしい。 実際、近隣住民の方には「姿が見えないのに声が聞こえる」「何かの気配がする」だの心霊スポットとして恐れられているそうだ。 あと興味本位で近付いてきた人間には、三成さまが怒り狂い来る人を追い返す。 そのせいで今では人っ子一人やってこない恐怖の場所として、本願寺の焼け跡に並ぶ名所になってしまった。 全くもって申し訳ない限りの話である。その原因である目の前の男はちっともそんなこと思ってなさそうだが。 「雨が降って刑部や半兵衛様、秀吉様が濡れなければいいのだが・・・。」 「・・・・幽霊って濡れるんですかね。」 「知らん。だが秀吉様達に泥でぬかるんだ地を歩かせるなど申し訳が立たない。」 「・・・・吉継さまはなんか浮けるから問題なさそうですけどね。」 はあと物憂げな溜息が薄い唇から漏れ、それを見た世の女性達はきっと躍起になってその憂いを払おうとするだろう。 普段は気難しくて偉そうな男だが(いや実際に偉いんだが)秀吉様達が絡む話題になると子供のような表情を見せる。 それが眉間に皺を寄せたような平生の表情にはない魅力があり、つまりギャップ萌えなんだろうが私はそれを冷めた目で眺めた。 (死んだ人間の足元には気を配れるくせに自分の足元は見えないなんて相変わらずだ。) 三成さまがこの城に、現世に留まる理由。 それは端的に言えば「待ち人未だ来たらず」だ。 この幽霊は吉継さま、半兵衛様、秀吉様の三人がこの城に戻ってくるのを健気に待ち続けている。 戦に敗北し死んだのちに気付けば地縛霊になってこの場所を動けずにいる―――この男を縛る理由は、その三人だった。 自分がそうであるように、未練を残した皆がこの城に戻ってくると考えている。 今ここにいないのは道に迷っているからだと、探しに行きたいがこの地を離れられないので待つしかないのだと。 もう既に何度か月を巡っているのに疑いもせずにそう信じ込んでいる。 かつての自分の黄金時代の残骸をかき集めて、それで救われるとでも思っているのだろうか。 (道に迷っているのは誰なんだか。) ――――そして私はその待ち合わせに付き合っている。 「・・・・・・・・、」 「ん?どうかしましたか?」 淀みなく動いていた細い足が不意に止まった。 いっそぶつかってやろうかと思いつつ私もならって止まる。 こちらを無視して宙を睨むその姿は何かに耳を澄ませているようでもある。 が、同じようにして耳を澄ませてみても一般ピーポーである私にはどうにも分からない。 だが研ぎ澄まされたこの人の耳には確かに何らかの物音が聞こえているのだろう。また怖いもの見たさの人間だろうか。 もう一度声をかけようとして開いた口を、制止するように骸骨のような指がその寸前に突き出された。 「黙っていろ。また家康が来ている。」 「え、まじですかよく分かりますね毎回毎回。私なんて何も聞こえないんですけど。」 「下らないことを言っていないでさっさと行け。」 「・・・・・・・あい。」 私のやる気のない返事に蛇のような睨みが返ってくるが、それ以上怒らせると面倒なのでそそくさと移動する。 三成さまはその反対方向へ、おそらく城門の方へ大股でさっさと歩いていく。 家康さまを出迎えに行くのだろう―――勿論、歓迎の意味ではない。 きっといつもみたいに家康さまには聞こえもしない恨み言を延々と垂れ流し、そして睨むのだ。 貴様のせいだ。貴様のせいで私の庭は壊れてしまった。そしてそんな貴様を受け入れた私が愚かだったのだと。 もちろん世間一般の認識に等しく、幽霊の声は生きている人間には届かないし、触れたりだとかの干渉もできない。 そのルールがなければ家康さまの首は何度この場所に転がるのか知れたものではない。 所詮はもう死んだ―――舞台を下ろされた人間、ということだろうか。 何も生み出さないし何も変化させられない、もう終わってしまった存在。 けれどそのルールは生きている人間にとっても同じ事。 生きている人間は幽霊の姿も見えないし声も聞こえない、つまり家康さまの謝罪は傍から見れば無意味な行為。 それでも家康さまはここにやって来て、見えもしない亡霊に謝罪の言葉を捧げにやってくる。 存在すら感じられないはずなのに、でも家康さまはまだ現世のこの場所に留まっていると確信しているようだ。 天下人としてやることは多々あるはずだが、足しげくこちらに通っては花を手向けては帰っていく。 その相手は花束なんて受け取れないのに。 「・・・・・・・・・。」 扉が開きっぱなしの食糧庫に音もなく入る。 一見不用心だが別に問題はない。ここにはもう何も残っていないのだから。 すっかり東軍に押収されて残った食料も腐り果て、食える餌もない倉庫にはネズミ一匹居やしない。 人間はもちろん、この終わってしまった舞台にはもう呼吸をしている生物なんていないのだ。 (家康さまがここを訪れる度、声をかけたくなる。 私はここに居て、きちんと花は届いていると伝えてしまいたくなる。) でもそれは、どうにもできない。 どんなに強い相手にも怖い人にも全く物怖じしなかった三成さまは、唯一私と家康さまが会うのは恐れる。 私がここにいることを隠そうとする姿は、子供がお菓子をこっそり隠すのと似ていると言ったら怒られるだろう。 ―――三成さまは、たぶん家康さまが私を連れて行ってしまうと思っているのだ。 私がいなくなっても三成さまの幽霊ライフには全く問題はない、むしろ世話をする手間が省けて楽だとは思う。 それでも彼はそんな不平は一言も漏らさずに傍に私を置いてくれようとする。置きたがる。 生きている頃から裏切り、もとい自分の懐から何かが転がる落ちるのだけは許せない―――ただそれだけだ。 (そしてそれだけの理由にいつまでも縛られている私も、なんて馬鹿なんだろう。 三成さまを見捨てればそれだけで、私はきっとラクになれるのに。) 少し躊躇ってから、話し声がする方向へと歩を戻す。 見付からないように気配を殺して近付くと、この暗い城に一条の光が注したような気がした。 (・・・・家康さまだ。) 三成さまが月と称されるのならば家康さまは正に太陽と比喩するに相応しい。 ただそこにいるだけなのにこの陰鬱な空気が浄化されているようにも感じてしまう・・・シ●神様ですか貴方は。 久しぶりに見た家康さまの肌色は相変わらず薔薇色の健康的なそれで、表情に憂いを帯びていながらも生きているその空気を感じさせる。 長い事忘れていた生の気配。溌剌とした命の鼓動―――生きている人間ってなんて眩しいのだろう。 いつものようにぽつりぽつりと謝罪と過去を恋慕するような言葉を漏らして哀しそうに微笑む。 眩しい笑顔しか知らないであろう外の人間はこれだけでも驚くかもしれない。 もっとも、一番びっくりするであろう理由は傍から見れば激しい独り言を気が触れたように繰り返している姿だが。 それでも自分の異常さと行動の無意味さを自覚しながら家康さまは言葉を止めない。彼の精神が正常だからこその優しい行為。 その優しさに縋らないと決めたのに、でも私の弱い心はそれだけで掻き毟られるような心地になる。 (・・・・・三成さまもよく憎しみが尽きない。) 普通、死ねば色々な柵から解放されて、少しは穏やかになるものだと思っていたがそれは勝手な想像だったらしい。 今にも視線だけで物理的なダメージを与えかねない目つきで家康さまを睨む。 最初の内は三成さまもまた相手に聞こえないことを承知で、延々と何度繰り返されたかも分からない恨み言・罵詈雑言を浴びせていた。 それだけでは飽き足らず斬りかかったり、首を絞めようともしていたのだが何度やっても空を切るそれにやっと諦めたらしい。 もうどうしようもないと分かっていても三成さまの復讐心は癒されない。 家康さまの言葉は耳に届いていても心には届いていない。 結局、彼のその有り様は巷に溢れるご都合主義な展開のように変わることはなかった。 そうして家康さまは最後にいつものように古井戸の中に花を手向け、そして先程とは違う何かを湛えた表情で手を合わせる。 「――――――、」 あの古井戸の底には腐った花の死骸が折り重なり山となっているのだろう。 誰も片付ける人間がいないので塵は積もるその一方。誰も使っていないというのに、心なしかどんどん水位は下がっているような気もする。 このままでは、いつか水面下に隠れていたものが溢れてしまう。 けれど私にはどうしようもなく、いっそ早く雨が降ってくれと思うばかりだがこの城の天気は滅んで以来全く変化がない。 死んでしまった場所には気候という変化すらないということだろうか。 (その時が最後、っていう事なんだろうなぁ・・・) 後ろからこっそり眺める私に気付いた様子もなく、家康さまは馬にひらりと跨り去って行った。 それを見送る三成さまは自分を抑えきれないようで何かを言いたげにその背を凄絶に睨んでいる。 私も三成さまを裏切ればこんな風にずっとずっと憎しみを保っていてくれるのだろうか―――そこまで価値のある人間に、私はなれただろうか。 「・・・・帰ったみたいですね。」 「・・・来るなと言っただろう。見付かったらどうするつもりだ。」 「いや、まぁ、どうせ見つからないだろうと思ったんで・・・」 「・・・・・・・・・。」 三成さまの指が私の方に伸ばされて、でもそれは触れる寸前で宙に落ちる。 幽霊はものには触れるが生きている人間に触れることができない―――三成さまは私に触れられないと自覚するのも恐ろしいようだった。 何を今更、もうずっと幽霊のくせに、死ぬこともないくせに。 いっそのこと、触れてくれればいいものを。 その残酷な温度で私を殺してくれればいいものを。 「―――刑部も半兵衛様も秀吉様も、どこで何をしておられるのだ・・・。 家康の憎い顔ばかりがここに現れる・・・ッ!!」 ぎりぎりと嫌な音をたてて歯ぎしりをして美しい顔を歪める姿はまさに修羅のよう。 死してもなお溢れるそのエネルギーをどうして他に向けようとしなかったのか。 今更竦み上がる心臓もない私は気付かれないように、内心で溜息をついて話題を変えるべく声をかける。 「それよりも三成さま、火鉢はどこですか。」 「・・・・・今から取って来てやる。はそこでおとなしく待っていろ。」 「ありがとうございます。お願いします。」 長い足を翻してさっさとどこかへ行ってしまう背を見送る。 その背が完全に見えなくなったのを確認してから暗い古井戸の中を覗き込んだ。 摘んできたばかりの瑞々しい、黄色を基調とした花束は昏い闇の水面で所在なさげにその身を漂わせている。 やがてそれは水底に引きずり込まれるようにして見えなくなった。いつもの光景。 その度に私はこの暗い水面下の世界に懸想する。 「・・・・・・・・・。」 最後、家康さまが訪れた部屋に赴く。 私の部屋に隣接する三成さまの自室よりも遠いその場所は、それでも私にとって特別な意味のある場所だった。 家康さまはこの部屋を訪れていつもそっと床に触れる。 すっかり酸化して黒ずみ畳に浸み込んだ、かつては私の血潮で真っ赤だったその染みを。 悼むように、悔やむように、嘆くように、悲しむように、家康さまは私が殺された場所を訪れる。 (三成さまはいつ気付いてくれるんだろう―――私もとっくの昔に死んでいるのに。) 私が死んだのも三成さまと同じ時期。 関ヶ原の戦いにて西軍が敗れたという悲報が入った時も私は自分の部屋にいて、殺されそうになったのだ。 名も知らない兵士の格好をした男がヒステリックに何事かを喚き散らし―――要は私のせいで負けたと思い込んでいるようだった。 追ってくる刃から逃げる宛もないのに走り、追い詰められ、視界が赤く染まり、そして気付いたら私はこの場に立っていた。 もうその頃にはこの城には誰も居らず、ははああれは何かの夢だったにちがいないという楽観視は足元の血の跡ですぐに払拭された。 自分の死体こそ見なかったが、それはきっとあの井戸の底に沈んでいるのだろうと実物も見ていないのに確信している。 これが生きている時には意識もしなかった魂と肉体の繋がりというものだろうか。 口では何と言おうと半信半疑だった幽霊というものに自分がなってしまった事に実感が湧かないでいると、三成さまもまた現れた。 生きていたのかと言う三成さまに事情を説明しようと口を開いたが、しかし相手が心から安堵したような笑みを浮かべたものだから何も言えなくなった。 (あの時、私に優しく微笑まなければ。 「生きていてよかった」だなんて柄にもないことを言わなければ、こんな風に縛られる事もなかったのに。) それからというものの、私はこの奇妙なおままごとに付き合っている。 恐らくあの井戸の底からは花と死体とで耐え難い腐臭が漏れているだろうが、幸いなことに幽霊に嗅覚は関係ないようだ。 ああ、それを考えると臭いと一言も不平を漏らさない家康さまはどこまでも優しい。 私が死んだのはあの場に居合わせることのできなかった貴方のせいではないのに。 (・・・・もうここには家康さま以外の誰も来ない。) きっと三成さまが待つ皆はこの世に未練など残すことなく成仏してしまったのだ。 吉継さまは親友の三成さまを守って死ぬことで。 秀吉様は例え裏切られようとも天下を掴む為に十全を尽くしたことで。 半兵衛様もまた死ぬその瞬間まで秀吉様に尽くし、そして秀吉様が死んだことで満足して。 ―――半兵衛様にいたっては最期まで身勝手な男だ。三成さまが未だ囚われているのは貴方の教育のせいなのに。 (私がもし、生きている時に何かをしていたら・・・それが無意味でも行動を起こしていたら。 例えその結果、三成さまに殺されていたとしてもこんな風に未練を残さずに私も逝くことができたのだろうか。) 時の止まった大阪城の中で、私達だけがこの城に囚われている。 皆が前を向いて歩いているのに私達だけは進むでもなく退くでもなくその場に留まっている。 三成さまはいつ気付くのだろうか―――待ち人の行方も、姿を見せないその理由も、私の正体も、 ただ一度、触れてくれれば私はやっと死ぬことができるのに。 どうか早くその骸骨みたいな指で私の肋骨を弄繰り回してこの煩わしい心を引きずり出して。 (ああ、死にたい。) →涙を流せるものはもういない ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- あとがき。 目を凝らせば、触れれば、それだけで崩されてしまうような脆い真実なのに盲目な三成は気付かない。これからもずっと。 傍に置きたがるくせに自分にとって都合の良い真実しか見ようとしない。理解しようとしない。 三成のそんなところは死んでも治らない。馬鹿は死んでも治らない。だから一生治らない。 gdgd具合から察していただけるように非常に難産でした。嘘みたいだろ?これでも推敲したんだぜ・・・? ちょっとひねくれた文章を書こうとしたらこれだよ! 苦手なものは何度弄り倒してもあまりよくないというオチでした。ハハッ・・ハハッ・・・(しろめ 「おめでとうございます、恵みに充ちた方よ」のリベンジのつもりでしたがどう見ても返り討ちです。本当にありがとうございます。 自分が心情描写が苦手な自覚があるので、どうしてもこういう独白系の小説はうまくいきませんね。精進シャス!! タイトルはむしろ「忘らるる都」のがしっくり来るんじゃねと思いましたが、「滅びし煌めきの都市」で浮かんだネタなので一応初志貫徹で。 煌めきの都市・イプセンの古城・忘らるる都・霧の城・ザナルカンド遺跡・極彩庭園・ホロウバスティオン・死海―――廃墟ってすてき。 瑠璃くんで一番印象に残ってる台詞は「真珠姫の匂いがする」です!!!!(キリッ 他にもええ事を言ってた気がしますが、やはりほぼ初対面の主人公の前でそれを言っちゃうあたり瑠璃君ェ・・・せっかくのイケメン枠なのに・・・ そんな残念な君が好きでラストバトルは主人公・非常食(ラビ)・瑠璃くんでいきました。 真珠姫の戦闘での使えなさっぷりに若干心が折れそうでしたが、 友達が「真珠姫は瑠璃君のストーカーをわざと振り切って迷子になっていると思うと萌える」という言葉でなんかがんばれました。 レディパール様にしばき倒されたいです。貝殻の槌のデザインが好みだけどチート過ぎて連れて行くのを躊躇うレベル。騎士さまぱねえ。 珠魅編のストーリーはいいよね・・・定期的にやり直したくなる・・・ あの話をやると『愛情』というものについて深く考えさせられます。 正しい愛情の形って何なんでしょうね。 悪魔と妖精編のスパッツ野郎について、友達が「あんまりにもうざいからレディパールを連れて行った」という容赦のなさが未だじわじわくる。 2012年 8月17日執筆 八坂潤