自分の推しに自決を迫られたことはあるか。


「―――さすがに呑めないか、この条件は」


私はある。
推しに対する解釈の一致に喜ぶべきなのか、守るべき命と推しに認定されていないことに悲しむべきなのか。私はきっと複雑な表情を浮かべていただろう。

そう、推しだ。
筆を引いたような柳眉に羨ましくなるほど長いまつ毛、その下に嵌る青玉の瞳。なめらかな小麦色の肌と高い鼻。
目の前に座る男の顔は、道行く女性の目を引くには十分過ぎるほどに甘く整えられている。あの安室透本人のご尊顔だった。

しかし、このとんでもない美貌の推し男を前にしても見惚れている心の余裕なんて到底なかった。
机の下で落ち着きなく両指を絡ませて、緊張に粘つく喉を唾液で無理やり潤す。
ここでもし答えを間違えようものならどうなるのか―――昨日の恐ろしい尋問が頭をよぎる。あーあ、どうしてこんなことになっているんだろう。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


これは安室透と出会った翌朝のシーンだ。
窓の外からは子供たちが学校へ向かう無邪気な声が聞こえる、穏やかな日常の朝。
だが室内の話はこの上なく物騒で、非現実的で、眩暈がする。こんな会話はフィクションの世界の中だけでやっていてほしかった。

冗談めかして笑う男の青い瞳は、そんな表情とは正反対にどこまでも冷えていて真剣だ。
もしここで拒否をすればどうなるのだろう。一生監視下に置かれるか、もしかしたら殺されるのか―――警察なんだから後者はないと思いたいけれど。


『もしも僕の秘密を守れない場面になったらその薬を飲んで死んでくれ』


自分を生活を保障してもらうために安室透の恋人のふりをする、という誰もが飛びつく破格の待遇にはとんでもない条件が付いていた。
勇猛なイケメンで高給取りで運動神経も頭の良さも抜群でしかも推し。とはいえこんな条件はさすがの私も拒否したい。・・・・そう、普段だったら。


(でも、この世界は漫画なんだし。死んだり痛い思いをするのはイヤだけど、しょうがないか)


甘いケーキに添えられた危険要素を認識しながらも、ゲームの選択肢をコント―ローラーで選ぶように軽い気持ちで受け入れる。
ここは現実じゃないんだからこちらまで真剣になる必要はない。だって私は登場人物ではなく傍観者より更に上の読者なんだから。だから大丈夫。


「わかりました。その条件でいいからここに置いてください」

「・・・・本気か?」

「そっちこそ冗談で言ったわけじゃないでしょうに・・」


私達の間を隔てる机の上には、一見すればなんでもなさそうな腕時計が置いてある。大きな文字盤が特徴の、デザインなオシャレであるとさえ感じるそれ。
だが、文字盤の横のネジを押し込むと薬が出てきた。素っ気ない白の丸薬はさきほど説明のあった通り、毒薬だ。
同じ腕時計のギミックでもコナン君の時計型麻酔銃とはえらい違いである。こっちはデスノートの世界線の産物だ。実際、こういう仕掛けがあった気がするし。


「私、根性がないので痛い目に遭わされたらきっと秘密を喋っちゃうし、でも安室透の足は引っ張りたくないから・・だから仕方がないです」


ものわかりのいい回答をして、理解のあるふりをする。実際そうだ。
あいにく模範的一般人なので尋問や拷問の経験はなく、そういった暗い世界はフィクションの知識しかない。―――が、とても痛いということだけはわかる。

普通の感覚として、痛い目にも怖い目にも遭わされるのもイヤだ。その苦痛から逃れるためならきっと頭を垂れて安室透の秘密を差し出すだろう。
いくら相手が大好きな推しでも、ただのファンとして捧げられる献身と犠牲には限界がある。

でもそれがよくないことだと分かっているし、ファンとしても推しの邪魔はしたくない。
だからその両方を避けるための手段が自決だというのなら、それも仕方がないのだ。こっちの世界で死んでもたぶん大丈夫だろう。例によって根拠はない。

腕時計のギミックを弄って再び薬を隠し、自分の手首に装着する。その状態でも仕掛けを何回か動かして動作確認。
私のような凡人が、文字通り手の届く範囲内にこんな危険物を隠し持つ羽目になるなんて、まったく世の中はなにが起こるか分からない。これもフィクションの世界ならではの体験だ。

じっと真意を探るように見つめていた海色の瞳がすっと細められる。まるで嵐が起きる前の沖のように。


「・・・・・もし、君が死亡した場合に僕に望むことはあるか?」

「安室透に望むこと、ねえ・・」

「ああ、それとその呼び方は改めてくれ。恋人をフルネーム呼びするやつがあるか」

「えー、あー、じゃあ・・安室さん・・・・」

「恋人だと言っただろう、透でいい」

「・・・・透さんでお願いします」


安室透でも安室さんでもなく、透さん。なんだか恋人同士のようで少しくすぐったい。
ちょっとニヤけそうになる唇をきゅっと噛みしめる。いかんいかん、今はそんな場面じゃない。

さて。
真剣に考えることを検討するとしてもいまいちピンとこない。彼が指すのはいわゆる遺書やら遺言やらということになるのだろうが。
元の世界でもこうして生きている以上、次の瞬間にも何かとんでもないことが起こって死んでもおかしくないというのに、どうにも真剣に考えたことがない。
明日も大して変わらない日常を過ごしていると疑ったことがない。それだけ平凡な人生を送ってきた。


「うーん、ないですね・・」

「まぁすぐには浮かばないだろうが、葬儀の手配や家族や友人への連絡といえば何かあるだろう?」

「・・・いえ、家族も友達もいないので。気にせず安室透のやりやすいようにしてくれれば、それでいいです」


当然ながらこっちの世界には自分の家族なんていない。友達は、たぶん作らない。

もちろん、好きな漫画のキャラクター達と仲良くなれるのはファンとしては嬉しい。
でもここはあの有名な推理漫画の世界だ。そんな住人達と友情を育むには殺人事件に巻き込まれる覚悟が必要になる。特にコナンくんの周囲には関わりたくない。

さっきの考えとは矛盾していると我ながら思うが、突き詰めると答えは簡単に出る。
自滅のスイッチを自らの指で押すような迂闊さを責められたくはないのだ。誰に責められるのかは分からない。


(それに、頑張って友達になっても元の世界に戻ったら水の泡になるんだし、やっぱり気が進まないや。
 私がちゃんと明るくてポジティブな性格だったらそういうの気にしないで素直にこの世界を楽しむことができるんだろうけど)


崩れると分かっている波打ち際の砂の城を、手間暇をかけて美しく飾り立てて喜ぶような童心も純粋さもない。我ながら陰気な性格だ。

別の意味で憂えた表情をする私を、青い瞳が静かに見つめていた。わざわざ探って頂いてもないものは何もない。
やがて整った唇が息を吐き、ぴんと張りつめていた空気がやや弛緩した。私も小さく呼吸する。


「本当の恋人関係を求めるでもなく、いざとなれば自害も厭わない――か、君は僕にとって都合がよすぎるな。本当に何もないのか?」


安室透としても(必要とはいえ)自分の非情な言葉には思うところがあるらしい。
そこには拾ったばかりの怪しい女に対してさえ、警戒すると同時に保護しなければならないと考えている深い正義感があった。

そうだ。面倒見のいい喫茶店員の安室透は公安のエリートの降谷零は犯罪組織への一員でもあるバーボンは、結局のところ優秀な警官だ。
だから自分の要求にも従順な相手を切り捨てることに全くの躊躇いがないわけではない。でも覆すつもりもない。ああ、この人のそういうところが好きだ。


「・・・どうしてもと言うのなら、一つだけ」


人間というのは厄介なもので、ワガママを言ってもいいと許されれば謙虚さなど簡単に水に流されてしまう。


「私が死んだら、一日だけその死を悼んでください」

「――――、」


ああ、やってしまった。言わなきゃよかった。

コップから水が零れるようににぽろっと口にしてしまった自分のお願いに、我ながらげんなりする。重たくて面倒な女だと思われてしまう。
安室透にとって自分の死に悲しむほどの価値があるのかとか、1日だけという些細さで偽装した傲慢さとか、もういろいろと。
でも言い訳をするのなら、たくさん友達を亡くしている男だからこそいつまでも引き摺ってほしくないというか、ああ言わなきゃよかった!


「あ、いやいや、その、」


誰か。頼むから五秒前くらいに時間を戻してほしい。そのためならなけなしの全財産を渡したっていい、その誰かに。
でも覆水は盆に返らない。とにかくもうやってしまったのだからせめて安室透が軽く流してくれることを願う。うう、誰か許してほしい。何をだ。


「でもどうせ私には結果はわからないので、しなくてもいいですよ。ほら、私その時にはもう死んでますし!」


頼む。どうにかしてこの場は軽く笑ってほしい。
祈るような気持ちでまくし立てる自分の早口フォローというか、取り繕いが必死で惨めで卑屈な笑みが出る。もうやだ帰りたい。

そんな私の頑張りなんてガン無視する安室透は、このトンチキ要求に対してピクリともその口角を上げることはなかった。
長い指を組んで完璧な造形の顎を乗せて、しばし沈黙した後に静かに呟く。


「1日か。―――短いな」


笑うでもなく否定するでもなく、静かに吐き出された言葉と声色は噛みしめるように重々しい。


「・・・まさか。長いですよ」

「そうかな」

「ええ、そうです」


そんな彼を見て、この遺言は意外にも良かったんじゃないかと少しだけ思ってしまった。
さっき自分が言った通り、結果なんて分かりやしないのに。それをしてもらったところで手遅れの私が救われることなんてないのに。

でもこの男はそうするだろうと、確信して、安堵した。






























爪。

つい三日前。梓さんに熱心に誘われて、お店でオシャレなネイルアートをしてもらった。
梓さんは可愛いピンクの華やかなデザインで、私は目の覚めるような綺麗な青のデザイン。
たかだか指先1センチ程度の面積を彩るだけで驚くほど気分は晴れやかになる。珍しく安室透も褒めてくれたのが、自分の手柄でもないのに嬉しかった。

まぁ、その爪は―――いま私の鼻先に転がっているんだけど。


「・・・・・・・、・・、・・・、」


誇張ではなく、今まで生きてきた中で一番痛い。
視界の端が赤く点滅して、痛くて、全身からどっとイヤな汗が噴き出て、左の薬指が熱くて、歯の根も合わないほど震えて、痛く、ひとしきり絶叫した喉も、ぜんぶ、熱い。

爪を剝がすのはポピュラーな拷問手段であり、大の大人でも泣き叫ぶほど痛いらしい。そんな知識を与えたのはどのフィクションが最初だったか。
思い出せないけれど、初めて知った時は絶対にそんな目には遭わないように気を付けようと誓ったのを覚えている。

なのになんでこうなってるんだろう。
私の平凡な人生に、こんなルートはないはずだったのに。


「すみません、痛い思いをさせて。でもほら、全く痛い思いをしてないのに素直に情報を渡されたって信用できないじゃないですか。
 だから俺はとりあえず爪を何枚か剥いでからお話することにしているんです。皆さんにも慎重だねってよく褒められるんですよ」


自分が爪を剥いだ相手に、国語の教科書を読み上げるように朗々と語りかける精神性を理解できない。なんでそんなに悪気がないの?怖い。

でも怖いよりも痛い。
痛い痛い痛い、あれ、いたい。痛くて熱くて、怖くて痛くて、痛くて、痛い。なんで痛い?

殴られて切った口の中には苦い鉄の味。顔を縦断する鼻血の川。道端の虫を払いのけるように蹴られた腹。
なによりも、台紙からシールを剥がすように小指の爪をペンチで剥がされた左の指先が痛い。

今までまったく痛い目にあったことがないわけじゃない。激痛に泣いたことだって何度もある。
でも、こんなに痛かったことなんて人生で一度もない。ましてや、それが他人から故意に傷付けられたことなんて。


「だからびっくりしてるんです。まさか一枚で、むしろペンチで爪を挟んだだけでアナタは『知らない』と言った。『わからない』じゃなくて『知らない』?」

「ひっ・・・・」


カチン、という小さな金属がかち合う音に大袈裟に全身が跳ねた。
その音だ。その音を出している道具を直視できない。きっと昨日までは見てもなんとも思わなかったのに、怖い、痛い。

手足を縛られて芋虫みたいに転がる犠牲者を線の細い青年が見下ろしている。
皮膚の下の骨を連想させるような白い肌に、漆をどろりと頭から垂らしたような黒い髪、沼の底のような暗い瞳。近寄りがたさを放つ冷たい美貌の男。

どんなに記憶を探っても、元の世界でもこちらの世界でも会ったことのない男だ。きっと街中ですれ違っても私なんぞに到底関心など持つはずがない、文字通り世界が違うはずの、


「お前、まさか本当にバーボンの秘密を知ってるのか?ははっ・・やっぱあの男、何かあるのか。おかしいと思ってたんだ、ずっと、ずーっと・・・」


まるで敬虔な信者がその信仰の果てについに天使に出会ったかのような、そんな恍惚とした声と笑顔を惜しみなく振り撒く。
場に不釣り合いな光景に、頬に触れるコンクリ床の冷たさだけが原因ではない寒気が全身に広がっていく。気まぐれにテーブルに水を垂らすように、密やかに。


「ゆ、ゆるして、ください・・・たすけ、てて・・・ゆるししして・・・・」


少しでもこの異常者から距離をとろうと、身じろぎをした際に薬指の先が地面を掠めて視界が赤く染まる。
惨めったらしく顔中の穴から赤と透明の液体を出して、必死に命乞いをしているのに聞き入れられる気配はない。

こんな状況に都合よく助けなんか現れるわけがないのに、視線はあの正義の味方の影を求めてしまう。
今頃、どこで何をやっているのか。警察なんだから今すぐ都合よく現れて王子様のごとく私を救ってみせろ。お願いだ、頼むよ。だってここ、漫画でしょ?
降谷零の親友も仲間もみんなお墓の下で、そしてその本人は仕事で忙しくて何日も帰ってきてないなんて、とっくに承知だけど。だけど!


「助けます。許します。だからアナタの持っている情報をさぁこちらに」

「い、いやだ・・・しゃべったら、殺される・・・」

「大丈夫。ちゃんと知っている情報を教えてくれるなら、俺がアナタの身の安全を保障します。だから安心して、口を開いて」


私の身の安全を、私の爪を剥いで拷問した男が保証するとうそぶく。
楽園で暮らす無垢な男女をそそのかす毒蛇のように、柔らかく優しい声と微笑みで背徳を誘う。

でも私はそこまで純粋じゃないから、喋ったらこの男かあの男に殺されることなんて、分かっている。ああもう、詰んじゃったんだ。


「もしかして・・爪を剥いだことを怒っているんですか?ごめんなさい。理由はさっきお話しした通りなんですが・・・実は八つ当たりもあったんです。
 あの男さえいなければ次のバーボンは俺で確定していたのに、横から現れて奪われて。しかもその時に恋人を殺されているんですよ?俺、かわいそうじゃないですか」

「安室透が、恋人を・・・殺した?」

「ええ。優しくて、大人しくて、だから俺が大切に守ってあげていたのに。・・・でもあの男が殺した」


悲劇の主人公よろしく、悲しげに睫毛を伏せて声のトーンを落とす。
事情を知らない第三者でも心配の声を掛けざるをえない、模範的で沈痛なポーズ。私も爪を剥がれていなければ同情していただろう。

安室透がこの男の恋人を殺した。
「ありえる」とも考えてしまうし「ありえない」とも思ってしまう。そもそもそんな悲劇は事実無根で、私から同情を引いて惑わすための大嘘なのかも。
―――ああ、いや、真実はどっちでもいいのか。その言葉を信じようと信じまいと、この男は秘密を吐かせる気満々だ。

男が身を屈めて私の乾いた唇へと耳を近付ける。
一字一句漏らすまいというように、子供が母親に童話の朗読をせがむように。


「さあ、教えて。あの男の秘密をこちらに。大丈夫、今度こそ守ってあげるから」


言ってしまいたい。全て吐き出して、許されたい。この恐ろしい状況から解放されたい。


「元を辿れば、アナタがそんな目に遭っているのもあの男のせいですよ。あの男がいなければ、そんな痛い目に遭わなくてすんだのに。かわいそう」


そうなのかな。そうかも。だって正直に言っちゃえばこんなに痛い目に遭わなくてすんだのに。

そもそも私みたいなのが安室透の恋人なんかやらなきゃよかった。高望みしすぎた。
だから罰が当たったんだ。生半可な気持ちで太陽に近付かずに、モブはモブらしく地面スレスレを飛んで俯いていればよかった。

・・・本当は喋る以外にもう一つ選択肢があることに気付いているけれど。でもこうやって両手を後ろに縛られていたら使えない。


「でも、正直に話せないのなら―――わかりますね?まだ9枚も残っているので」

「・・・・・・、」


ぱちん、とまたあの音がする。片方の手は私の髪を柔らかく撫で、もう片方の手はペンチを握って左手の小指の先に押し当てる。焦らす。
たったそれだけで、その意味するところに、怖くて恐ろしくて『好きな人の秘密を守ろう』なんて健気な勇気は微塵になって崩れる。唇が震える。


「あ、・・・あむろ、とおるは、」


怖い。これを言ったらどうなってしまうのだろう。
安室透に殺される?でもしゃべらなくてもこの男に殺される?いずれにしても死ぬのなら、喋らないほうがよくない?
でもでも、どうせ殺されるのなら、これ以上痛い思いをしないで死にたくない?後のことなんて知ったこっちゃない、だって私、死んでるんだから!これ以上、苦しまないためなら、私、


「!」


突然響いた陽気な電子音に場の緊張が途切れる。音の発信源を辿ると、出所は男の懐に入っているスマートフォンのようだ。

だがこの状況では外部からの着信なんて当然考慮されるはずがない。男も当然無視する。私でもそうする。―――が、長々と響く諦めの悪い音楽に根負けした男が舌打ち交じりで取り出す。
その際に懐から銀色のピルケースが飛び出して、地面に当たって軽い音を立てた。当然、拾おうと男が手を伸ばすがすぐに引っ込められる。


「はい、もしもし。こんばんは、どういったご用件ですか?―――ああ、その件ですか」


こちらからは聞こえない声を聞いて、男の細眉がわかりやすく顰められる。どうやら、落とし物なんかどうでもよくなるような相手のようだ。
浮かべている表情とは真逆の人当たりの良い声で応対を始め、そしてそのまま部屋を出て行ってしまった。


「はっ・・・は、・・・っ、は・・・」


一時的とはいえ脅威が去り、乱れた呼吸を整える。電話の相手が誰だか知らないけど助かった―――いや、だめだ助かってない。
その電話の内容だか相手だかは大事らしいが、それもいつまでもお話をしてくれるわけじゃない。この状況も救ってくれない。
また、あの神経質そうな男が突然気まぐれを起こして拷問を取りやめてくれるとも思えない。この時間は、ただ単に処刑台への階段の段数が増えたようなものだ。


(今、ここで、これ以上苦しむ前に、死ぬしかない)


ハードな日常とは無縁な一般人でもその考えに至るのは仕方がなかった。そのきっかけは安室透とのあの約束。
だってほら、爪を一枚剥がされただけでこんなにも痛くて怖くて、それがあと九枚も残ってるなんて、絶対に耐えられない。

だからといってしゃべりたくない。あんなに頑張っている安室透を売りたくない。その苦労をふいにしたくない。
・・・漫画のキャラクターごときにそこまで義理立てする必要はないと冷徹な私は断ずるが、だったらここで潔く退場してもいいだろう漫画なんだからと献身的な私が提案する。


(漫画の世界で死んだら元の世界に戻れるかも。根拠なんてないけど、なんとなくそんな気がする。だってトラックに轢かれて異世界に行くのが流行りのご時世だし、全然ありえる)


ちゃんと普段通りに頭が働いていたら、そんな訳あるかいと即座に否定できるのにそれができない。この場から、この痛みから逃げることしか考えられない。


(あの時計・・くそ、後ろ手に縛られてるから届かない・・・、)


どうすればいい、どうすればこの場から逃げられる。どうすればこれ以上痛い思いをしないで済む?

縛られた状態で体は動かなくても、目玉だけは死を渇望してギョロギョロと活発に動く。
やがて眼球はあの男の落とした銀色のピルケースに答えを求めた。あの男がこの状況で懐に忍ばせているものが胃薬だか風邪薬だかであるはずはない。きっと、その中身は。

逸る心臓を心の手で抑えながら、地面に擦れた肌と傷口が痛むのを気にせず、救いの手を求めて這い寄る。
歩けば一歩の距離をやっとの思いで詰めて、舌先でなんとかピルケースの蓋を開ける。赤と白に塗り分けられたカプセルが一つ地面に転がった。


(これが・・・・たぶん、毒薬・・安室透に渡されたのとは違うけど・・・)


もしも毒薬じゃなくて自白剤だったりしたらどうしよう。それとも全く関係ない薬だったら?

それでも望みに縋り、餌を貪る犬のように顔を寄せるとカプセルが鼻先に触る。角度を変え、舌を伸ばして唇で薬を挟む。
地面に落ちたものを食べるなんて動物みたいでみっともないけれど、誰も見てない上にこれから死ぬんならノーカンだ。


(私が死んだら安室透はどんな反応をするんだろう)


我ながら性格が悪いと思いながらも考えてしまう。でも本当に最期なんだからこれくらい許されると思う。
それなりに長い時間を過ごして色々な出来事を通して仲良くなった。・・・とは思いたいけれどその心はわからない。なんせ相手はあのトリプルフェイス様だから。
悲しんでほしいという意地の悪い気持ちもあるし、もうこれ以上悲しまないでほしいという心の綺麗な部分の祈りもある。どっちにしろ、その結果を見届けられないのは気がかりだ。


(そういえば、あんな遺言を残したけれどあいつはどうするのかな)


誰かがこちらへ向かってくる足音が扉越しに微かに聞こえる。躊躇ってから、カプセルを口の中に含む。
毒薬といってもカプセルの外側が溶けるまでは問題ないはずだ。だから。

もしも次にドアを開けるのが安室透だったら、この毒薬を吐き出そう。
でも、もしもそうじゃなかったら―――、


「・・・・!」


ドアがゆっくりと開かれる。その隙間から覗いたのは、全く知らない男の顔だった。




































「・・・・・・はっ!」


なんかすごいイヤな夢を見た気がする。
ポアロのバイトからの帰り道を歩いてたら無理やり車に連れ込まれて縛られて、目隠しされたままどこかへ攫われて。
そしてどこぞの地下室で安室透の秘密について問い詰められて、拷問されて、白状しそうになって(我ながら根性がない)。

相手が席を外した隙を見て自殺しようとした―――いや、した。
漫画みたいに悪趣味なデザインのカプセルの毒薬を飲んで、全身が熱くなって、指先から骨も何もかもドロドロに融け落ちるように痛くて、そして。


「いっっったい!!!!!!!」


考え事をしている間にどこかに掠めた左手からの激痛に、比喩でもなく全身が飛び跳ねた。なに!?今の痛み!!!
反射的に背を丸めて暴れる心臓と内心を抑える。視界が涙で滲むほどの痛みに困惑しながらも、しばらくそうしているとやっと落ち着いてきた。

恐る恐る見てみると左手の薬指に包帯が巻かれている。これが激痛の原因だろうが、手当てしてあるようだ。
はて、こんなところをケガするような用事が最近あっただろうか―――脳裏に悪夢の内容がよぎる。なんとなく、包帯をめくろうとした手が止まる。


「ん・・・?」


生まれた時から親よりもずっと一緒。そんな見慣れたはずの自分の手に包帯よりももっと大きな違和感があった。

小さい。
自分の手はもっと大きかったような、せめて林檎くらいは片手で持てるレベルではなかったか。だが今のサイズ感ときたら柚子一つ握りしめる程度だ。
半信半疑で無事な方の右手を動かしてみる。頭の中で描く通りの動きをする。・・・これは自分の手だ。

そういえば顔と口の中にも違和感、というかピリピリとした痛みがある。
無事な右手でぺたぺたと頬を触ってみると、何かが貼り付けられているようなむずがゆさがあった。この感触は、絆創膏?


「・・・・・・・」


自分が今どんな状態になっているのか急に不安になってきた。あの夢のこともある。いや所詮は夢だが。

おあつらえ向きに用意された部屋の隅の姿見の鏡をのぞこうとして、部屋の内装も身に覚えがないことに気付いた。
アンティークの書記机にクローゼットに本棚。棚の上には陶器の人形やドライフラワーを飾られた花瓶や洒落た小物入れなどが行儀よく並んでいる。

うん。ここ、絶対に私の部屋じゃないな。

色々とパニックになりそうな頭の中をなんとか宥めつつベッドから降りる。
きちんと二本足で立っているはずなのに、自分の視点の低さに決定打を与えられた気がした。


『取引を見るのに夢中になっていたオレは、背後から近づいてきたもう1人の仲間に気付かなかった』


ああ、これ知ってる。日本人の大半は一度は聞いたことがある。
それでも我が身にそんな、漫画みたいなことが本当に起こっているだなんて信じたくない。
でも今はその漫画の世界にいるんだから絶対に起きないなんて断言できない。だって、それがこの漫画の始まりなんだから。


『オレはその男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら・・・』


素足で触れるフローリング床の冷たさも気にならないほどの恐怖がある。だって、そんな、自分がそうなっていたら、どうなる?
今の頭脳で小学校に戻ったら天才児として持て囃されちゃうな~いいかもな~なんて、誰もが一度は考えたことがある。でも実際に起きる想定なんて誰もしない。

そういえばあの毒薬。あの時はそれどころじゃなかったけど、今考えてみると見覚えがありすぎる。
安室透をバーボンと呼んで拷問した男は間違いなくあの黒ずくめの組織の関係者だ。それなら入手経路も不自然じゃない。

やっぱり、あれは夢ではなかった?じゃあこの左手の包帯の下にはまさか、爪がないのか?


「・・・・・・・・・・・」


鏡に映る自分の姿を見て、比喩でもなく声にならないほどの衝撃に固まった。
体感としてはたっぷり数時間ほど。でも実際の時間にすれば約一分ほど。落ち着け、検証だ。
右手を動かせば鏡の相手の左手が動き、その場でジャンプしてみると鏡の相手も同じタイミングでジャンプする。着地の衝撃が伝わって左手がまた痛んだ。夢じゃない。


『体が縮んでしまっていた!』


何度も聞いたあのセリフが頭の中で反芻する。まさにいまの私だ。
小学生くらいの自分の姿の記憶なんて頼りないけれど、アルバムをめくればこんな姿なのだろう。実際に比較できないのは残念だが。


「うっそでしょ・・・まさか、そんなことある?は?なんで??こんな、ばかみたいな、」


口では悪態をつきながらも力が抜けてその場に倒れこむ。マジか。どうすんだこの状況。こんな姿じゃ元の世界に戻っても困るが!?
・・・いや、どうせ大人の姿でも家に帰る方法は見当もついてないんだから、とりあえずそれは横に置いておこう。でも困ることに変わりはない。


「・・・・・」


そういえば、鏡を見てもう一つ気付いた事がある。
もともと着ていた服ではなく、ちゃんと今の子供用サイズに合ったパジャマを着ていることだ。もちろん私がこんなものを持っているはずがない。誰の仕業だろう。

いや、そもそもこの部屋はあの拷問部屋とは違う。誰かの家で誰かの部屋だ。名探偵ではないが、埃の少なさからつい最近まで誰かが使っている。
小さくなった私をここに運んで、怪我の手当てをして着替えさせて、そしてベッドに寝かせた、誰か。順当に考えればあの拷問男だが。


(・・・まずい。私があの薬で小さくなったことが、あの男にバレた?)


組織の毒薬で極稀に頭脳はそのままで子供の姿になることがある。それが連中に知られて過去を洗い直されたら?
読者にとってはお決まりで分かり切ったこと。でもこの世界の人間のほんの一握りにしか知られていないこと。


(江戸川コナン=工藤新一がバレる?)


物語の根幹を揺るがしかねない恐ろしいネタバレにさっと血の気が引く。
あの毒薬を飲んだ相手がたまに子供になって生き延びていると、あの連中にバレたら―――コナンくんはどうなる?灰原哀ちゃんもだ。
なぜ工藤新一が大好きな幼馴染に正体を隠して長いことやってきたと思っている。その苦労を、私がふいにしてしまったんじゃ、


(どうしよう。どうしようどうしようどうしよう!どうなるんだ、この漫画は、私のせいで終わる?しかも主人公がままま負けて、お、おお終わったらどうなる?)


とんとん。


「ひっ」


部屋の扉がノックされるだけのなんでもない音がやけに大きく響く。あの男が様子を見に来たのだろうか。
い、いやいやいやもしかしたらワンチャン安室透が助けに来た可能性、いやないか。あれ、安室透はコナン君の秘密を知らないんだっけ?えっと、えっと、


「入っても大丈夫か?」

「・・・・・・・・・」


ノックの主は聞きなれたあの声じゃなかった。やっぱり、という失望と諦念が沼のように湧いてくる。

―――ドアの向こうの誰かは私の体が縮んだことを知っている。
この秘密を誰かに知られるのは、いやもう手遅れだけど、とにかくこれ以上探らせるわけにはいかない。どうすればいい。


(に、にににに、逃げなきゃ、ドア・・は塞がれてて窓から・・・・もしここが一階じゃなかったらどうする!?)


もう一度響くノックの音に思考回路は砂糖細工のように砕けた。

もはや本能というべきか、ベッドの下に勢いよく身を滑らせて息を殺す。また掠めた左手の薬指が痛い。つらい。
咄嗟に隠れてしまったが自分の行動の無意味さに呆れる。窓とドア以外に出入口がない部屋で、こんな身動きのとれない場所にいても仕方ないだろ!

でもやってしまったものはどうしようもない。
今さらになって識者ぶって指摘してくる自分の脳みそに反論するのなら「そんな的確な行動が咄嗟にとれるわけないだろ私なんだから」だ。

被告人の必死の訴えに頭の中の裁判官が厳粛な面持ちで頷くのと、ドアが開く音はほぼ同時だった。
低く狭められた視界に誰かの足が映る。大きさからしてきっと男の人だろう。こわい。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


相手は何も言わない。私がどこかに隠れたことくらい、普通の知性があれば誰でも気付く。
どこに隠れたかは、分かりやすい候補はクローゼットの中かベッドの下くらい。ああ、絶対にすぐにバレる。
相手が気を取られている内に逃げ出すか?だめだ、自分の運動神経の強さに全く自信が持てない。

無理やり引っ張り出されて詰問される未来が見えて目の前が暗くなる位。
いや、尋問ですめばいいが・・・もしかしたら、また拷問かも・・・また、あんな痛い思いを?ならいっそ死んでおけばよかった!


「警戒するのも無理はない、か」


まるで善意の保護を振り切ろうとする野良猫に対するような口調だ。
少し間を置いてから、ベッドの近くに片膝を立てて座り込む―――どう考えてもバレている位置だ。
フローリング床の僅かな溝を掴んで引きずり出されることに備えるが、何もしてこない。だからといってその位置から動く様子もない。


「こちらの方がいいか―――安心してほしい。俺は君が恐れているような相手ではない」

「!?」


次に掛けられた言葉は先ほどのものとは明らかに違う人間の声だった。
いや、それどころか聞き覚えすらある気がする。ある気がするが、ええと思い出せない。しばらく聞いていなかったのは確かだ。


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


その最初の声掛けからどれくらいの時間が経っただろうか。
相手はいつでも捕まえることができるはずなのに、いつまでも片膝をついたまま動こうとしない。ずっと私が出てくるのを待っている。

私と相手の根競べはいつまで続くのか。その終わりは唐突に腹から告げられた。よりによって自分の。


「あ・・・・」


この緊迫した状況下で我ながら信じられないことに、ぐ~という間抜けなお腹の音が鳴った。いやマジか。

相手は何も言わないでくれている。だが沈黙に耐え切れずに先に動いたのは私の方だった。
ベッドの下から顔を覗かせてみると、やはり知らない男が私の前に座っていた。
茶髪の下の眼鏡の奥は柔和に細められ、高い鼻と整った唇に首元まで覆うハイネック。・・・とりあえず顔が良いことはわかった。

手を伸ばせばすぐに届く距離なのに、なおも男は動かない。触ろうともしてこない。まるで自分の意思を尊重してくれているかのような態度に警戒心が揺らぐ。


「君が安室君の恋人だな。こうして会話をするのは初めまして、だが」

「う・・・・」


やっぱりこいつ、私の元の姿と素性を知っている。体が縮んで今の姿になったのもバレてるというわけだ。
安室透の名前を出すということは敵なのか、味方なのか。なるべく核心に近いことは答えないでおこう。


「すみません・・その、あなた、誰ですか?・・・・声は聞きおぼえがあるけど、分からない」

「赤井秀一、といえば多少は話が通じるかな」

「あかい、あかいしゅういち・・・・赤井秀一!!!??うそ、だって全然姿が、いっつ・・・・」


まさかの名前に勢いよく顔を跳ね上げてしまい、当然の結果として強かにベッドに打ち付けた肩は新鮮な痛みをもたらした。い、痛い。
でも仕方がないと思う。だって、まさか、あの安室透の宿敵の男の名前を出されて動揺しないなんて無理に決まってる!あの赤井秀一さんだぞ!?

じっと改めて姿を観察してみるが、スクリーンで見た姿とはまるで違う。まるで別人だ。
やっぱり担がれているのではとも訝しむが、―――そういえばこの世界には魔法めいたインチキ手段がある。そう、変装だ。


「まさか、変装」

「そのまさかだ。俺は世間一般では死んだことになっている・・・もちろん安室君に対しても。俺の正体に勘付いてはいるようだが」

「・・・そんな大事なこと、私に教えていいんですか?安室透に教えちゃうかもしれないのに」

「その姿で彼の元に戻るのはお勧めしない。そうすれば色々な人間が命を狙われるハメになる」


それもそうだ。
安室透・・・バーボンにこの姿で会えば薬の効果のことが知られてしまう。例え黙っていてくれたとしても、周囲が許さない。
そうなればコナンくんも灰原哀ちゃんも殺されてしまうかもしれない。それこそ、さっき考えた物語の根幹を揺るがしかねない要素じゃないか!

というか、そもそもこの姿で会いに行っても信じてくれる可能性は低そうだ。
むしろ私が知らない女の子に秘密を教えて姿を眩ませた、とも捉えられかねない。うん、そんな風に誤解されたら絶対に殺されるな、私。


「・・・・なんであなたが私のことを助けたんですか。安室透とあなたは敵対しているのに」

「彼が愛するものをこれ以上失うべきではないと考えたからだ」

「――――、」


そう返されてしまっては、言葉が続かなかった。
安室透が私を愛しているのかとか、そんな反論も咄嗟に出てこないくらいに。

黙り込む私に小さく息を吐いてから、赤井秀一が立ち上がる。こうして地べたから見上げると彼は巨人のように高い。


「さて、俺は着替えてから一階で食事の準備をしておこう。まずは腹ごしらえをして、話はそれからだ。気が済んだら出てきてくれ」


そう言い残して、赤井秀一は本当に去って行ってしまった。
しばらくベッドの下でじっとしていたが、のそのそと這い出て大きなため息を吐く。緊張の連続だった。

一応は礼儀として窓の外から顔を出してみるが、部屋は二階にあるらしく、私の運動神経では到底脱出できなさそうだ。
微かに吹いたそよ風に前髪をくすぐられる。まるで夢のような出来事の連続だった。


(あれは、本当に赤井秀一だったんだろうか。それこそ変装で、まったくちがう誰か・・・怪盗キッド、はさすがにないか。じゃあベルモット?)


私を騙して全部聞き出して、この姿のことを研究したり利用したり、ああもう疑い始めればキリがない。この世界の変装はチート過ぎる!
散々しっかり迷ってから、―――結局は、ベッド脇に揃えられた小さなスリッパを履いて部屋の外に出た。


『彼が愛するものをこれ以上失うべきではないと考えたからだ』


だってあの言葉は、きっと赤井秀一からでないと出てこないと思ったのだ。








































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あとがき。
①夢主がにわかファンの設定は、この沖矢昴=赤井秀一の秘密を知らないほうがいいからです。
 知っていたら安室透に吐かされてたと思います(こっちはさすがに拷問まではしないと思うけど・・)知らないことをしゃべることはできない。

②夢主が毒薬を飲む最後に見た男は沖矢昴なので、実は夢主が毒を飲まなくても助かっていたというオチ。世の中はままならない

③ネイルアートをした爪が拷問で剥がされるのって、すごく可哀相な気がします。
 肉体的に痛い表現は私の描写力では難しく、また相手が可哀相になってしまうので、今まで都合よく避けてきたのですが、
 さすがにこの状況から無傷で帰すのは・・なんだかなぁと思ったので入れました。
 なお、私のファースト爪剥ぎフィクションは戯言シリーズの武桐伊織ちゃんです。

④赤井秀一と夢主の間にはお互いに恋愛感情は一切なく、また、今後も芽生えません。すみません。


2022年2月13日執筆 八坂潤
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